第四回尾崎放哉賞 一般の部

尾崎放哉大賞

だんだん空が大きくなる坂を上る
東京都
遠藤 多満

春陽堂賞

誰もいない野で水車が時を洗っている
兵庫県
堀尾 深放

優秀賞

グラスの氷が溶ける音で切りだす話し
福岡県
丹村 敦子
春を信じている継続定期券
東京都
中井 靖子
薄野に乳房ひとつ隠して帰る
宮城県
汐海 治美
僕ひとつ消えて信号は青
東京都
岩渕 幸弘
背表紙だった鳥を放してやる
千葉県
小笠原 啓太

入賞

コロナのまんなか芋の芽青々
山口県
大村 久子
会いたい時は海の匂う道に出る
福岡県
増田 眞寿子
はらりとほどけて蝶結びはさびしい
山口県
久光 良一
言わぬもことばステンレス色の今日の海
大分県
内橋 多真
白い菊供えてきちんと生きたい
大分県
橋本 登紀子
描いていた林檎をかじる
東京都
藤井 雪兎
車止めひっくり返って廃駅の午後
石川県
吉田 怜央
秋を釣っているのか 岬に一人
兵庫県
手島 隼人
八月の陽とどかぬ川底の無口
東京都
さいとうこう
一日老いて軽くなつた
神奈川県
古関 聰

第四回尾崎放哉賞 高校生の部

最優秀賞

書架のほこりを射ぬく冬の光
群馬県立
伊勢崎興陽高等学校
大野 美空

優秀賞

猫に旅をさせたくなる冬満月
武蔵野大学附属
千代田高等学院
岩崎 寿知
入道雲の向こうまで歩いていけそうな夏
名古屋市立
桜台高等学校
川村 瑠美
胸の奥つっかえたままのビー玉ひとつ
東筑紫学園
高等学校
宮川 唯
髪をすすぐ明日きる髪
角川ドワンゴ学園
N高等学校
日和 沙絵
夜が滲み出す校舎に座す
愛知県立
旭丘高等学校
渡邉 美愛
桜が満開になる頃私たちはもう散っている
群馬県立
伊勢崎興陽高等学校
青木 美空
マスク干す今日も世界の星は降ってる
聖ウルスラ学院
英智高等学校
横溝 麻志穂
校庭の隅を彩るあなた
岡山県立
瀬戸南高等学校
森伊 七海
会いたいと思うたび夜が曲がる
東筑紫学園
高等学校
勇 椋太
水中から星をすくい上げた冬
群馬県立
伊勢崎興陽高等学校
上野 可蓮
赤い弁当箱を水にさらしておく
愛媛県立
大洲高等学校
谷本 かな子

特別賞

石になってシャーペン止まる
岡山県立
瀬戸南高等学校
高田 栞帆
ガードレールに沿って木星の闇深し
東京都市大学付属
高等学校
込谷 和登
区切られた空の四角い窓がある
東洋英和女学院
高等部
山中 理彩
この世界には鉄のウミネコなんていらない
群馬県立
伊勢崎興陽高等学校
石原 希彩
架線と鉄塔が朝焼けを切り抜いてゆく
東筑紫学園
高等学校
草野 理吏

【第四回尾崎放哉賞 選者】

自由律俳句結社『青穂』役員: