第一回尾崎放哉賞 一般の部

尾崎放哉大賞

月の匂いの石に坐る兵庫県藤田 踏青

優秀賞

寒たまご割れば一人の静けさ 山口県佐伯 喜誠
湯気にふるさとがある里芋の煮付け 山口県久光 良一
もつれあう蝶見つめる二人のこれから 山口県流転
いつもどこか身構えている黒のヒール 茨城県南家 歌也子
片方だけの手袋その悲しみを拾う 静岡県松村 利信
点滴はずれて人間になる 富山県西田 一彦

入賞

つつがなく大衆であり、まずビール 東京都 本山 麓草
戦争を歩いた母の頑固な足裏 愛知県 竹葉
吊るされて鮟鱇腹の底から空を見る 山口県 瀬戸内 光
今日は今日の心になる靴紐しっかりしめる 静岡県 中野 弘雄
ひらひらひらがな座っていく秋のベンチ 鳥取県 谷田 越子
虫時雨止む女の白い足 福岡県 丹村 敦子
しあわせとか言いそうになる口からけむり 奈良県 川城 博之
鋭角な病棟に月は刺さってゐる 愛知県 零人
ビルの谷間で老人が案山子になっている 大阪府 村瀬 和廣

第一回尾崎放哉賞 高校生の部

最優秀賞

地球儀の裏側から潮風愛知県立豊橋西高等学校北川 順子

優秀賞

君の頬を抜ける風になりたい 広島県立広島高等学校里 莉名
色のない夜にいる 鳥取県立鳥取東高等学校田中 美紗貴
素足で歩む等身大のわたし 広島県立広島高等学校大野 美森
やり場の無い手袋とバスを待つ 秋田県立秋田西高等学校千葉 優翔
一両列車が来る今日も平和だ 鳥取県立鳥取東高等学校石原 祥子
傍なのに楽しいお喋り指でする 鳥取県立鳥取東高等学校谷口 七海
さらさらと流れる川を犬が見ている 鳥取県立鳥取東高等学校石谷 知子
人の心の参考書が欲しいです 鳥取県立鳥取東高等学校中家 秀斗
泣いても構わない鉛筆の先尖らせて 福岡県立修猷館高等学校雪吉 千春
せせらぎの音を掬う 埼玉県 星野高等学校福澤 駿
帰り道僕は一人でオリオンを探す 愛知県立幸田高等学校三田 悠斗

【第一回尾崎放哉賞 選者】

自由律俳句結社『青穂』役員: